( ニ コ )

タカハシマコさんの漫画。
自分をロボットだと言う不思議な少女(ニコ)に出会った様々な人々の物語。
繊細な絵柄と、毒々しい味付けをされたキャラクターの齟齬と違和感。
現実感のあるものではない、ここまで極端に単純化される人間がさほどいるわけでもあるまい、だけれども、目が離せない、軽々しく笑えない物語。

タカハシマコさんの描く世界には、いつも違和感と反発を抱く。
この世界のように、人間は自分の事にも他人の事にも一生懸命にもなれないし、ヤケにもなれない。
もっとニュートラルの位置で、茫洋と他の人間を裏切り、自分も裏切り、その痛みに責任は取らず、誰に責任も求めず、生きている。
そんな生を、この作品は認めてくれない。

自信が無ければ、夢が無ければ、猫を拾わずに通り過ぎれば、好きな人間に好きと言わなければ、対立すべき人間に対立しなければ、出世しなければ、子を成さねば、人は生きてはいけないのか。

生きていける。
冷笑でも自嘲でも、自虐でも何とでも言え。
生きない人間よりは、億倍もマシだ。

綺麗な生を、充実した生を、後ろ暗くない生を、そんなものを求める心が、自分の崩壊に繋がるなど、本末転倒もいいところだろう。
ただ、生を裏切らなければ。
人は生きていける。