消火器少年

夏になると思い出す。
時をかける少女を見た時の気分。
主人公でも仲の良い友人達でもなく、自分は消火器を振り回して、当たり前のようにいなかった事にされた高瀬君だった。
ゲラゲラ笑いながらコミカルな場面を見、ヒロインが泣く場面でしんみりと涙を流した大多数の観客達。
何とも言えない疎外感。

語られない高瀬君の話。
主人公やら友達やらがめいっぱい好き放題に生きたように、高瀬君だって、めいっぱい好き放題に生きようとしたはずなのに。
夏の空は、彼の上にも陽光を降り注がせてくれたはずなのに。

「だからいじめられるんだよ」
聞くたびにゲロを吐きそうになる、嫌な言葉。
そうなるのが当たり前で、そうなってしかるべき、みたいな決めつけられるような言葉。